研究概要 |
2家系の低身長、緑内障、白内障、帯状角膜変性症を伴う純型永続性近位尿細管性アシドーシス患者にNa^+/HCO3^- cotransporter (kNBC)遺伝子(SLC4A4)のミスセンス変異を認め、さらに同変異kNBC蛋白が機能低下をきたすことを明らかにすることにより、世界で初めてSLC4A4の異常が純型永続性近位尿細管性アシドーシスの原因となることを証明したので報告する。 患者はいとこ婚の両親から生まれた21歳の女児と血族結婚でない両親から生まれた11歳の女児。末梢血白血球のmRNAよリkNBCに特異的なprimerを用いて遺伝子解析し、kNBC cDNAの1,043番目のAdenineがCitosineに、1,678番目のGuanineがAdenineにそれぞれ変異するホモ変異を検出した(R298S,R510H)。両変異は患者のgenomic DNAにも認められた。両親は同変異と正常遺伝子とのヘテロ接合体であった。また、両変異は正常人78名には認められなかった。ECV304細胞に発現させた変異蛋白の活性は正常蛋白に比ベ55%と57%に低下していた。また、ECV304細胞における正常および変異蛋白のmRNAの発現量には差は見られなかった。さらに、kNBCに固有なcDNA probeを用いてkNBCの遺伝子座は膵型NBC(pNBC)と同様4q21であることを明らかにした。kNBCの異常は近位尿細管細抱におけるHCO3^-の再吸収を阻害して近位尿細管性アシドーシスをきたすだけでなく、角膜のHCO3^-濃度を上昇させ角膜でのCaの沈着を促進して角膜変性症をきたすと推定された。
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