研究概要 |
私共は緑内障、白内障、帯状角膜変性症を伴う純型永続性近位尿細管性アシドーシス(pRTA)が腎型Na^+/HCO3^- cotransporter(kNBC)遺伝子の異常(R298S、R510S)によることを昨年度に朋らかにした。本年度は緑内障のみを呈する純型永続性pRTA患者のkNBC遺伝子に新たな異常を認めた。患者は低身長(-5.6SD)、緑内障、代謝性アシドーシス(pH7.200,HCO3^-9.4mM/L)、低K血症(3.4mEq/L)、尿酸性化可(pH4.500)、アルカリ投与下のFEHCO3^- 40.4%の12歳女児。両親は健康で低身長を認めない。患者の末梢血リンパ球よりcDNA libraryを作成後、kNBCに固有のprimersにてkNBC cDNAを合成しDNAsequenceを行った。その結果、kNBC cDNAの234番目の塩基CがTに変異するホモ変異が認められた。kNBC遺伝子にも同じ変異が認められた。同変異は両親由来であり、78名のcontrolには見られなかった。同変異はcodon 29のGlutamineをstop codonに変えるnonsense変異(Q29X)で、変異kNBC蛋白は3′側の1007個のアミノ酸を失ったtruncated proteinとなり機能が著しく障害されることが予想された。一方、kNBCは膵型NBC(pNBC)のintron 3の3′部に由来する41個の固有のアミノ酸を持ち、5′部の994個のアミノ酸はkNBC、pNBCの両方に共通する。Q29XはpNBC遺伝子にとってはintron3の内部に位置る変異のため、pNBC蛋白には影響を与えないと推定された。kNBCの機能を低下させるがpNBCの機能に影響を与えない変異は白内障、帯状角膜変性症の原因にはならないことが推定された。
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