研究概要 |
(1)Zellweger症候群(ZS)患者由来の線維芽細胞について糖脂質解析を行った。症例は臨床診断がZSが2例、乳児Refsum病(IRS)が1例で原因遺伝子は全例、PEX2遺伝子の変異である。各々の繊維芽細胞を培養後、ハーベストし、凍結乾燥後、脂質の抽出、TLCによる分画、定量を行ったところ、セラミドジヘキソシド、および、ガングリオシドGM3が正常対照に比べ、およそ2倍に増加していた。また、グロボシド近傍に著増したバンドが患者全例で認められた。このバンドの同定については目下検討中である。またTLC免疫染色法でガングリオシドGM1,GA1,GA2の染色を行ったが、GA1,GA2は検出されなかった。GM1は対照に比べ、患者で約1/2に減少していた。 (2)ZSのモデル細胞であるCHO-K1変異細胞株(Z65)は遺伝子学的に上記で検討した症例と同じくPEX2遺伝子に変異をもっている。これまでにZ65細胞でセレブロシド、ガングリオシドGM3の増加を見いだしており、さらにその機序を解明するため糖脂質代謝の出発点に位置するCeramide glucosyltransferase活性の測定、グルコシルセラミドの分解酵素であるbeta-glucocerebrosidase活性の測定を行った。Ceramide glucosyltransferase活性はZ65細胞で対照のCHO-K1細胞に比べ、亢進しており、一方、beta-glucocerebrosidase活性は両細胞間で変化はなかった。このことから、Z65細胞では糖脂質合成系の亢進が確認された。ヒトやマウスとホモロジーの高い、3'末端側の約300bp部分のRT-PCRで、予備実験をしたところ、Z63細胞で発現が強くなっており、cDNAよりceramide glucosyltransferaseのクローニングを進めている。
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