研究概要 |
ペルオキシゾーム欠損細胞における糖脂質代謝変化の解明を行った。まず、チャイニーズハムスター卵巣細胞の変異株(Z65)において糖脂質合成の第1段階の酵素であるセラミドグルコシルトランスフェラーゼ(CGT)mRNAの発現を対照細胞と比較するためにCGT cDNAのクローニングを行った。その結果、CGTは394個のアミノ酸からなるおよそ45KCDaの蛋白質であり、ヒトとのホモロジーがアミノ酸配列で98.7%と極めて高く種族間でよく保存されていることが示された。3'末端の約300bpをプローブとしたノーザンブロットでZ65細胞でのCGT mRNAの発現の増加が認められた。次にペルオキシゾーム病患者由来線維芽細胞においても同様な糖脂質合成の亢進があるかどうかを検討した。Zellweger症候群および乳児Refsum病患者由来線維芽細胞から脂質を抽出し精製後、薄層クロマトグラフィー(TLC),TLC免疫染色、質量分析法によって正常対照細胞との比較を行った。患者由来細胞では正常細胞では検出されないガングリオシドGM1,GDlaを検出した。またこれらのガングリオシドの前駆体であるガングリオシドGM3に対するモノクローナル抗体を用いて免疫組織染色を行ったところ、患者由来細胞で細胞質内に顆粒状にGM3が検出され、プールを形成していると考えられた。従来プルオキシゾーム病では注目されていなかった糖脂質代謝変化について初めて定量的、および免疫組織学的にその合成が冗進していることを見出した。糖脂質は細胞の分化・増殖・細胞間情報伝達・細胞死に重要な機能的役割を有することが知られており、上記の結果はプルオキシゾーム病で認められる様々な病態解明の手がかりになる可能性が示された。
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