研究概要 |
脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy : SMAと略す)は脊髄前角細胞の変性によって進行性の筋萎縮を生じる比較的頻度の高い常染色体劣性遺伝疾患である。発症時期や重症度によって3型に分けられるが、いずれも5q13に座位するSMN(survival motor neuron)遣伝子変異が原因となる。私達はSMAtype Iの日本人家系についてSMN1、および重症度に関与するとされているNAIP遺伝子、マイクロサテライトマーカー解析によってSMN exon7,8を含むlarge deletionを有する患者の頻度が高いことを報告した。SMN1遺伝子のコピーであるSMN2遺伝子は部分的にSMN1遺伝子の欠失を代償している可能性が報告されている。SMN1/SMN2の比を検討することで遺伝子背景がさらに明らかとなると考えられる。SMA type I患者の両親や同胞15例についてSMN1/SMN2の比を検討し、73.3%、の症例においてSMN1/SMN2が1以下(0.5あるいは1)であり、残りの症例ではこの比が1/3であることが明らかとなった。この結果はSMN1欠失の背景としてSMN1がSMN2へgene conversionをおこすよりもSMN1近傍のlarge deletionが主体であることを裏付けている。今後はSMN2遺伝子のコピー数を明らかにすべく、gene dosage解析が必要と思われる。
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