ナイーブT細胞のTh1/Th2細胞への分化能とアレルギー性疾患発症との関係を解析するため、臍帯血よりCD4陽性T細胞を分離し抗CD3抗体とB7で刺激する方法の有用性を検討した。臍帯血より高純度のCD4陽性細胞を短時間で効率良く分離する方法を確立し、Th1タイプのサイトカインとしてIFN-γを、Th2タイプのサイトカインとしてIL-13をELISAにより測定可能であることを確認した。この方法で初回刺激時に産生されるIFN-γ、IL-13濃度は、刺激後IL-2で増殖させた後に再刺激を行った場合のIFN-γ、IL-4産生能とそれぞれ相関が見られたことよりTh1/Th2細胞への分化傾向の指標として利用できることが判明した。 これらの予備実験の結果をふまえ正常満期で出生した106名の新生児の臍帯血からCD4陽性T細胞を分解して刺激を加えた。その結果、臍帯血によってIFN-γの産生が優位なもの、IL-13の産生が優位なものが存在し、Th1、Th2への分化傾向が臍帯血によりことなることが明らかとなった。さらに、Th1細胞への分化に重要なIL-12を刺激時に加えるとIL-13産生は抑制され、IFN-γ産生は増強されるが臍帯血によってはIL-12への反応が弱く、IL-12存在下においても大量のIL-13を産生するものが存在することが明らかになった。 現在、臍帯血にみられたサイトカイン産生パターンの違いとIL-12への反応性の差とが、臍帯血ドナーである新生児のアレルギー性疾患家族歴と関連するか否かの解析を開始している。今後、1年後を一つの目安としてアトピー性皮膚炎や食物アレルギーの発症との関連性の追跡調査を行う予定である。また、臍帯血より分離した血清を用いIgEを測定し胎内感作との関係も解析する計画である。
|