研究概要 |
ナイーブT細胞のTh1/Th2細胞への分化能とアレルギー性疾患発症との関係を解析するため、臍帯血よりCD4陽性T細胞を分離し抗原提示細胞非依存性刺激として抗CD3抗体とB7により刺激を行いサイトカイン産生能を測定した。さらに、臍帯血ドナーの新生児の臨床症状を1年間追跡しアトピー性皮膚炎、気管支喘息、食物アレルギーの発症の有無を確認した。その結果、臍帯血CD4陽性T細胞によるサイトカイン産生パターンは従来の報告と異なり、必ずしもTh2細胞に片寄ったサイトカン産生パターンを示すのではなく、Th1タイプのサイトカインを産生しやすいものも存在した。アトピー性疾患の発症との関係では、Th2サイトカインであるIL-13の産生がアトピー性疾患を発症した乳児群で発症しなかった群より高値を示した。さらに、Th1細胞を誘導するIL-12存在下でのIL-13産生もアトピー性疾患発症群で高値をとる傾向がみられた。一方、Th1サイトカインであるIFN-γの産生はアトピー性疾患発症群と非発症群との間に有意の差は認めらなかっった。また、両親のアトピー性疾患家族歴の有無とサイトカイン産生能の間にも差はみられなかった。乳児期に湿疹病変は、アトピー性皮膚炎以外にも好発するが、IL-13産生能は湿疹性病変の持続期間とも関連し、アトピー性皮膚炎のように湿疹が2ヶ月以上持続した群では、2ヶ月未満の短期間で治癒した群にくらべ高値をしめした。多変量解析の結果、アトピー性疾患の発症危険因子としては、IL-12非存在下のIL-13産生能と両親のアトピー性疾患家族歴が同定された。,以上のことより、臍帯血CD4陽性T細胞によるIL-13産生能は、アトピー性疾患発症の危険性をもつ新生児を同定する上で有用であり、アトピー性疾患、特にアトピー性皮膚炎の病態に関与する因子として重要と考えられた。
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