研究概要 |
本研究は雄ラットを用いた動物実験で、各種免疫抑制剤、内分泌撹乱物質の精巣毒性に関する検討と精巣障害に対する治療効果の検討を行った。 1、Cyclophosphamide(CP)による精巣障害 下垂体摘出ラットにGHを投与すると、LH、FSH非存在下で、GHが精巣の発育を促進し、生殖細胞数を増加させることを明らかにした。またこの作用は、LH作用、FSH作用とは異なる機序で起こっていることを明らかにした。この結果はGHが性腺機能不全の治療に有効である可能性を示している。CP投与による精巣障害に対して、GH投与がどのような効果を示すかを検討した結果、GHは精子形成に促進的に働くと共に、薬剤による精巣障害を軽減することが明かとなった。GH前投与では効果が見られなかったことから、臨床的なGH投与に関しては投与時期の検討が重要である。 2、ダイオキシンによる精巣障害 ダイオキシン(TCDD)の無毒性量を長期間投与した時の、性腺機能の分化、成熟、精子形成を組織学的、分子生物学的に検討した。無毒性量のほぼ上限を維持するために10ng/kg/dayを7日毎に投与した.出産後21日まで母乳飼育し,21日目に,内臓奇形の有無を確認し臓器を摘出した。TCDDの影響で肝臓での発現が増強されるCyp1A1が3週齢で増加しており、経胎盤性、母乳性にTCDDが仔ラットに移行していることが明かとなった。精巣はPAS染色し,精祖細胞,精母細胞,精子細胞数をコントロールラットと比較したが、組織学的には明らかな違いを認めなかった。以上より、微量のTCDDが胎盤、母乳を介して胎仔、新生仔に移行していることが示された。 3、精子形成関連遺伝子の発現 3週令,7週令ラット精巣をもちいてdifferential display法により数種類の未知の遺伝子を採取し,その中から5週令以降の精巣でのみ発現する遺伝子(SRF-1)を単離した。In situ hybridizationにより,この遺伝子は精母細胞で発現していることを確認した。SRF-1は精子形成能の指標となると考えられる。
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