研究概要 |
研究課題「メチル化特異的PCR法を用いたX連鎖遺伝病の保因者診断法の確立」に沿って,一年目の平成11年度は以下のような2つの研究成果を得た. 1.女性集団におけるX染色体不活性化パターン (1).X染色体上の不活化をうける遺伝子の一つであるアンドロゲン受容体遺伝子のメチル化領域にPCR用のプライマーを設計した. (2).メチル化DNA検出プライマーが不活化されたX染色体を,非メチル化DNA検出プライマーが不活化されないX染色体を増幅し,これらプライマーが女性におけるX染色体不活化パターンを示すことを確かめた. (3).インフォームドコンセントを得て採取された女性100名から得られた血液DNAを用いて,女性集団におけるX染色体不活化パターンの分布を調査した. (4).この結果,ほとんどの女性がほぼ50:50に近いランダムな不活化を示し,極少数の女性が歪んだ不活化を示すことが判明した. 2.女性患者のX染色体不活化パターンによる疾患の遺伝形式の推定 (1).ベージェソン・フォスマン.レーマン症候群は,男性患者が多いことからX連鎖劣性遺伝形式が示唆されているが,確定はしていない. (2).本疾患に罹患している女性患者のX染色体不活化パターンを解析した. (3).その結果,この女性は非常に歪んだX染色体不活化パターンを示していることが判明した. (4).この結果は本疾患遺伝子がX染色体上にあり,変異した遺伝子がのったX染色体が活性化され,正常遺伝子がのったX染色体は不活化されていると解釈された.したがって,本疾患はX連鎖遺伝病であることが強く示唆された.
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