研究概要 |
ヒトSCOT遺伝子をクローニングし,本遺伝子が約150kb以上の大きさで,17のエクソンをもつこと,そのすべてのエクソン/イントロン境界を明らかにした.また英国,オランダ,米国の3症例の遺伝子変異を同定し,もっとも表現型の軽い英国の症例では遺伝子変異が残存活性をもつ変異であることを明らかにした.またSCOT遺伝子がなぜ正常肝細胞で発現しないのかをあきらかにするためSCOT上流域の解析を行った.約3kbの配列を決定し,基本的なプロモーターにはSp1が結合して活性化されることを明らかにし,肝臓特異的な抑制に関与すると思われる領域を検討した。 T2欠損症ではスペイン5症例の蛋白遺伝子解析を行った。1例はDelE85とG152Aの複合ヘテロ接合体,1例はG152AとE345Vの複合ヘテロ接合体,1例はK124Rのホモ接合体,1例はQ145Eのホモ接合体,最後の1例は380C>Tのホモ接合体であった.380C>Tはエクソン5上にあり,この変異によってエクソン内にスプライスアクセプター部位が生じ,ほとんどがこの部位でスプライシングが生じていた.またミスセンス変異のうちQ145E変異のみが残存活性を有する変異であることを明らかにした.また遺伝子変異を決定した26例について主治医にアンケート調査を行い,臨床経過,予後,遺伝子型と臨床型の関連について調べた。この報告はT2欠損症ではじめて行われた臨床追跡調査であり,意義深い。T2欠損症は診断さえつけば,以後の重篤な発作は軽度の蛋白制限などにより防がれており,予後もこれまで報告されていた以上によいことがわかった。また臨床的重症度は遺伝子型と明らかな相関はなかった。
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