研究概要 |
臍帯血幹細胞移植では移植片対宿主病(GVHD)が軽く、白血病では移植片対白血病効果(GVL効果)が期待できない可能性もある。GVHDの発症にはいくつかの免疫担当細胞が関与している。樹状細胞などの抗原提示細胞はヒト主要組織適合抗原HLA上のアロ抗原ペプチドをT細胞に提示し、このT細胞は宿主を攻撃する。今回は臍帯血単球からサイトカインで誘導した樹状細胞によるT細胞のアロ反応性増強効果について調べ、樹状細胞によりGVHD/GVL効果を増強できるかどうかについて基礎的検討を行った。 予備実験より樹状細胞は臍帯血単球から誘導可能であることを確認していたので、まず臍帯血単球の特性について検討した。臍帯血単球は成人血単球に比べて抗原提示能が低く、その機能は未熟であることを報告した(Pediatrics International,2001、印刷中)。次に、樹状細胞によりT細胞を活性化したあと早期にT細胞死が誘導されるとGVL効果を持続させるには都合が悪い。そこで樹状細胞のアロ反応性増強効果後の結果について調べるために、活性化したT細胞がアポトーシスを起こす機構について検討して報告した(Eur.J.Immunol,2000)。更に、臍帯血移植後の免疫学的回復について、ドナーの年令が移植後の免疫学的回復に逆相関し臍帯血移植では早期に免疫学的回復が得られることを報告した(Brit.J.Haematol,2000)。このように臍帯血移植後に早期のT細胞同復が起こることを利用して、早期回復したT細胞のGVL効果が臍帯血樹状細胞によって増強されることが期待される。
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