研究課題/領域番号 |
11670760
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
乾 幸治 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (90175208)
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研究分担者 |
酒井 規夫 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (30314313)
岡田 伸太郎 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (30028609)
塚本 浩子 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (50263281)
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キーワード | ファーバー病 / 皮下結節 / アポトーシス / セラミド / MCP-1 / TGF-β |
研究概要 |
[目的]ファーバー病(MIM228000)はリソゾーム酵素であるヒト酸性セラミダーゼ(以下ACと記す)の欠損により全身の臓器にセラミドが蓄積する常染色体劣性遺伝の先天代謝異常症である。臨床的には、関節の有痛性の腫脹、皮下結節、暖声などの症状とともに精神運動発達の退行、痩せが徐々に進行し乳児期に死亡するタイプが多い。セラミド蓄積と痩せや皮下結節形成の関係を明らかにするために、患者の皮下結節と培養皮膚線維芽細胞(以下SFと記す)における発現遺伝子を検索した。またマクロファージ様細胞株に細胞透過性セラミドを負荷し発現量の変化する遺伝子を検討した。 [方法ならびに成績]皮下結節における発現遺伝子のRT-PCRによる検索 疼痛軽減のため切除した患者皮下結節と正常、患者のSFを対象にサイトカイン、細胞内シグナルに関する約50種のプライマーセットを用いてRT-PCRを行った。結節とSFでは発現遺伝子の傾向が異なったが、正常と患者のSFでは明らかな差を認めなかった。結節組織内へのマクロファージ集積を裏付けるように結節内でマクロファージ遊走因子であるMCP-1(Macrophage Chemoattractant Protein 1)の発現を認めた。 細胞透過性C_2-セラミドによる反応遺伝子の検索 THP-1、HL-60をTPA(12-O-tetradecanoylphorbor 13acetate)にてマクロファージ様に分化させた後、細胞透過性C_2-セラミドを負荷した細胞からRT-PCRを行った。内因性コントロール遺伝子との比較により目的遺伝子の発現量を半定量し、結節で認めたMCP-1発現の増強を確認した。 [まとめ]リソゾーム蓄積症の中でファーバー病に特異的な皮下結節形成は、患者結節における発現遺伝子とマクロファージ様細胞のセラミドに対する反応からMCP-1が病態形成に関与していると示唆された。また痩せに関しては、最近NF-kBによるMyoD発現の抑制が筋再生を阻害するとの報告があった。マクロファージ様細胞において、p65(NF-kBのサブユニット)の発現がセラミド負荷に対し反応性に増加したことは、本症における痩せの原因とも推察された。
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