研究概要 |
ヒト骨髄より単核細胞を分離後、造血前駆細胞の発現に関係していると考えられているCD34抗体、c-Kit抗体、CD38抗体を用い、FACS Vantageでsortingを行って造血前駆細胞を純化した。骨髄間質細胞は骨髄単核球を付着させることにより樹立した。純化骨髄細胞の免疫不全マウス(NOD/SCIDマウス)への異種間移植での生着の促進を図る目的で、骨髄間質細胞と純化細胞の共移植での効果と、マウスにヒトに対するアネルギー状態を誘導すべくCTLA4-Igでの前処理の効果を検討した。骨髄間質細胞の先行移植でマウスの感作を行い、CTLA4-Igの投与に続いて、純化骨髄細胞の移植を行う系により、ヒト細胞のマウスへの生着が確認された。一方、純化骨髄細胞を骨髄由来ストローマ細胞上で共培養を行い、骨髄細胞の生存と増殖能をコロニー形成能で検討した。純化骨髄細胞をストローマ細胞上での培養を経時的に行うことで、造血前駆細胞の生存、コロニー形成能は約8週間にわたり維持することが可能であったが、Stem cell factor,ligand for flk2/flt3,thrombopoietinを添加することにより、8週間時点でコロニー形成細胞を約20倍に増幅することが可能であった。これらの生体外増幅を行った細胞の移植を試みているが、現段階で増幅細胞のマウスへの明らかな生着は確認することが出来なかった。以上より、今後、マウスの免疫系の操作と、骨髄間質細胞の共移植を利用することにより、より高感度のヒト細胞の異種移植の系の作成が可能と推測された。しかし、骨髄再構築能を有する細胞の生体外での増幅に関してはさらなる検討が必要と考えられた。 さらに、骨髄造血細胞の純化は造血障害を呈する先天性骨髄機能障害を有する疾患での病因へのアプローチが可能であり、本研究では一部先天性好中球減少症の骨髄よりの純化造血細胞の造血因子に対する反応性、造血障害の機序の検討も併せて行った。
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