研究概要 |
マウスクローズドコロニーのICRに由来する一近交系(アルビノ)の産仔の中に生後直後より明らかに体格が小さく、体重が軽い個体が観察された。このマウスは角質層の増加、皮下へのリンパ球浸潤が著明で、アトピー性皮膚炎モデルマウスと考えられた。本マウスでは、胸腺皮質細胞の著明な減少、脾臓構築の破壊、肝、肺への著明なリンパ球浸潤が生後2週間ですでに観察されることから、免疫系細胞の発生分化異常の存在が示唆され、さらにフローサイトメトリーではコントロールに比し、脾臓細胞のCD3,CD4,CD8分画の著減とB220の増加、Mac-1分画の増加が観察された。これらの免疫異常の一部としてアトピー性皮膚炎類似皮膚疾患が出現するものと考えられた。さらに機能的解析においては、脾臓由来T細胞を抗CD3抗体で刺激するとコントロールに比し、有意なIFN-g産生能の減少とIL-4産生能の増加が観察され、TH1、TH2バランスが明らかにTH2へシフトしていることが観察された。この点からも本マウスは免疫系細胞の発生分化異常に伴うアトピー性皮膚炎発症マウスとして有用であると考える。 本免疫異常を起こす原因遺伝子を同定する目的で原因遺伝子のマッピングを行った。全染色体につきマイクロサテライトマーカーを設け、それぞれのマーカーにつきヘテロ型の個体数をカウントした。異常を示した個体を対象にしてマイクロサテライトマーカーを検査し、マーカーについてヘテロ型とホモ型の個体数をカウントし組み換え率(ヘテロ個体数/検査個体数)を算出した。この結果、第17染色体のマーカーのみが組み換え率10%以下の値を示し、他の染色体マーカーはほぼ20%の値を示した。このことからint遺伝子が第17番染色体のマイクロサテライトマーカーと明らかに連鎖していることが判明した。さらに、int遺伝子に最も近い距離にあるマーカーはD17Mit122(51.9cM),D17Mit41(53cM)であった。今後原因遺伝子の同定につなげてゆきたい。
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