研究概要 |
小児期のTTウイルス感染の病態と感染経路について検討した. 1)小児期の肝炎とTTV感染について輸血歴を有する38例,輸血歴および肝炎歴の無い30例(コントロール群),B型肝炎の16例,C型肝炎の14例,非A-C型肝炎の45例(急性肝炎27例,慢性肝炎13例,劇症肝炎5例)を対象とした.輸血歴を有した群でのTTV DNA検出率はOkamotoらの方法では31.6%,Takahashiらの方法では78.9%,コントロール群ではそれぞれ6.7%と60%であった.また、妊婦はそれぞれ12.9%と61.3%であった。コントロール群と比較すると、Okamotoら方法では輸血歴を有する群は明らかにTTV陽性率が高かった。しかしTakahashiらの方法では明らかな差は認めず、それらの陽性率は60%から82.4%の範囲の値であった。B型肝炎群ではOkamotoらの方法で0%,Takahashiらの方法では50%,C型肝炎群ではそれぞれ21.4%と71.4%,非A-C型肝炎群では20.0%と57.8%であった.Takahashiらの方法でのTTV DNA検出率はOkamotoらの方法の約2-9倍で,各肝炎間で差は無かった. 2)小児のTTV感染経路について慢性B型肝炎の1例(家系1),B型肝炎ウイルスキャリア妊婦より産れた3例(家系2-4)およびC型肝炎ウイルスキャリア妊婦より産れた1例(家系5)の児およびこれらのうち3例に認めた同胞が各1人,1人,2人あった.4例の母親(家系5の母親は未検査)と1例の父親(家系1)についてTTV DNAを検索したところ2例の母親(家系2と3)が陽性であった.同胞間で塩基配列(222塩基;Okamotoらが報告したN22クローンのnt1959-2180)の相同性を検討すると,家系1-3ではそれぞれ100%,99.5%および92.3%であった.一方,家系2と3の母子間での相同性は99.5-100%および62.6-63.9%であった.これらのgenotypeをみると,家系1の同胞,家系2の同胞と母親,家系3の母親はgenotype1に,家系4と5の児はそれぞれ2aと1bに分類されたが,家系3の同胞は別のサブグループに分類された.これらの成績からはTTVの感染経路として,垂直感染(家系2)と共に同胞間での水平感染(家系3)が生じている可能性が示唆された.
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