研究概要 |
小児期のTTウイルス感染の病態と感染経路について. 非A-C型肝炎とTTウイルスゲノタイプ1との関係に関する検討: 小児期のTTウイルス感染率は検索に用いるprimerの種類により大きくことなり,5'端の非翻訳領域にprimerを設定した場合,コントロール群,輸血群,非A-C型肝炎群のTTウイルス検出率は60-80%の範囲にあり,3群間で検出率に明らかな差異を認めなかった.このことから,小児期のTTウイルスは成人と同様に"無害"なウイルスとして大部分の小児に感染している可能性が示唆された.一方,N22領域にprimerを設定した場合の検出率は,コントロール群と非A-C型肝炎群ではそれぞれ7%と25%で,後者における検出率はa明らかに高かった.更にこれら2群においてゲノタイプ分布を検討すると,非A-C型肝炎群では2/10(80%)ゲノタイプ1がであったのに対し,コントロール群では8/25(40%)と前者ではゲノタイプ1の検出率が明らかに高かった.すなわち,小児期の非A-C型肝炎の約20%はゲノタイプ1のTTウイルスが原因となっている可能性が示唆された. TTVの感染経路に関する検討: TTウイルス母子感染が存在することは既に前年度に報告した.今年度は感染経路について検討した.すなわち,臍帯血,だ液,母乳中のTTウイルス検出率を検討した.結果は,検出感度が高いとされる5'端の非翻訳領域に設定したprimerを用いても臍帯血中での検出率は12%であるのに対し,だ液中では96%,母乳中では35%と検出率に差を認めた.このことは母子感染経路として,分娩時の経胎盤感染よりだ液或いは母乳を介する感染の頻度が高いことが示唆された.
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