単クローン性増殖がサザン法によって証明されたEBウイルス(EBV)関連末梢T細胞性悪性リンパ腫(EBV-PTCL)10例(男3人、女7人)の末梢血・骨髄血より、RT-PCR法によってLMP1遺伝子(3'側細胞質内ドメイン)を増幅した。増幅産物をTAクローニングシステムを用いてクローニングし、それぞれのLMP1遺伝子の塩基配列を決定し、一般に標準的EBVとして用いられている伝染性単核症から樹立されたB95.8細胞株由来のEBV-LMP1遺伝子と比較検討した。 その結果、すべてのEBV-PTCL由来のLMP1の3'側に共通の30bp deletionを見い出した。これは、B95.8由来のEBV-LMP1には認められず、EBVに関連した鼻咽頭癌から樹立された細胞株CAOに見られるものと同一のものであった。さらに、B95.8由来のEBV-LMP1には認められない7つのアミノ酸置換がすべてのEBV-PTCL由来のLMP1に確認された。また、B95.8由来のEBV-LMP1には4つしかないDNGPQDPDNTDというアミノ酸のくり返し配列が、EBV-PTCL由来のLMP1には4から8個認められた。しかし、LMP1の機能上重要なTRAF binding motifはよく保存されていた。以上から、EBV-PTCLに感染しているEBVはLMP1遺伝子に特有の構造変化がおこっていることが判明した。現在、このEBV-PTCL由来のLMP1の機能特性を解析中である。
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