EBウイルス(EBV)関連末梢T細胞性悪性リンパ腫(EBV-PTCL)は、EBの感染したT細胞が、単クローン性に増殖した悪性リンパ腫で、予後不良の疾患である。EBV-PTCLに感染しているEBVは、T細胞の腫瘍化のみならず機能発現(サイトカイン産生)に影響していると予想されるが、実験室でT細胞に感染しないため、T細胞に対するEBVの作用については今日までほとんど解明されていない。一方、EBV-PTCLではがん遺伝子としての活性を持つEBV由来のLMP1遺伝子が発現しており、EBV-PTCL発症との関わりで注目される。 本研究では、1)EBV-PTCLに発現しているLMP1の遺伝子解析を行い、野生株との分子学的相違を解明すること、2)EBV-PTCL由来および野生株由来のLMP1遺伝子全長をT細胞株(IL2依存性株、CD8陽性株)に導入し、増殖、形質発現、機能(サイトカイン産生能)への影響を解析すること、3)LMP1導入T細胞株を免疫不全マウスに接種し、腫瘍原性およびEBV-PTCLモデルとなるか検討することを目的としている。 これまでに10例のEBV-PTCLのLMP1遺伝子のDNA配列の解析した。その結果、全例のLMP1遺伝子のC末端に30bpの欠失と4-8tandem repeatの存在が明らかになった。さらにこれらについてアミノ酸配列の解析を加えたところ、EBV関連鼻咽腔がん由来のCAO細胞株と同一の7箇所アミノ酸置換が見られた。 今回明らかになった7箇所アミノ酸置換のEBV-PTCL発症に関わる生物学的意義を解明するために、10例のEBV-PTCLから得られたLMP1遺伝子の活性をNF-κBを標的として解析中である。
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