GFP蛍光標識レトロウイルスベクターによる慢性肉芽腫症の遺伝子治療

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11670781
• 研究機関: 自治医科大学
• 研究代表者: 久米 晃啓 自治医科大学, 医学部, 講師 (10264293)
• 研究分担者: 小澤 敬也 自治医科大学, 医学部, 教授 (30137707)
• キーワード: 遺伝子治療 / 慢性肉芽腫症 / レトロウイルスベクター / 緑色蛍光蛋白質

研究概要

【目的・方法】慢性肉芽腫症(CGD)の遺伝子治療を目的とし、伴性劣性型慢性肉芽腫症(X-CGD)モデルマウスを用いてベクター開発を行っている。標的細胞である血液細胞に対して遺伝子導入効率が高く、さらに顆粒球・単球系細胞における導入遺伝子の発現に有利なシスエレメントの検討のため、X-CGDの治療用遺伝子であるgp91遺伝子と細胞標識のための緑色蛍光蛋白質(GFP)遺伝子をもつバイシストロニック・レトロウイルスベクターを数種構築し、他施設より分与されたものも含めて解析した。
【結果】1)造血系細胞への遺伝子導入効率やin vivoでの長期発現の点では、MSCVベクターのもつlong terminal repeat配列やプライマーtRNA結合部配列が有利だった。2)一方、遺伝子導入したX-CGDマウスの骨髄細胞をin vitro培養して得られた顆粒球のフローサイトメトリー解析・nitroblue tetrazolium(NBT)アッセイの結果、目的遺伝子の高レベル発現のためにはMFGベクターのような強いスプライシングシグナルをもつベクターが有利だった。3)そこで、MSCVと改良型MFGベクターからそれぞれ有用と考えられるシスエレメントを切り出して新しいベクター骨格(MGK)を作製し、gp91とGFP遺伝子を組み込んだ。このベクターにて遺伝子導入したX-CGDドナー骨髄細胞をX-CGDレシピエントマウスに移植してin vivoの追跡を行った。移植後のフローサイトメトリー解析では両遺伝子を発現する血球が高頻度(約50%)に存在することを確認し、NBTテストでは同様の頻度で機能を回復した顆粒球が出現していた。
【考察】新規に作製したMGKベクターの有用性を確認した。今後蛋白質レベルでの発現量を解析して、さらに発現効率の優れたベクターの開発を目指す予定である。

研究成果

• [文献書誌] Matsuda KM: "Development of a modified selective amplifier gene for hematopoietic stem cell gene therapy"Gene Therapy. 6(6). 1038-1044 (1999)
• [文献書誌] Kume A: "A G-CSF receptor-gyrase B fusion gene: a new type of molecular switch for expansion of genetically modified hematopoietic cells"Biochemical and Biophysical Research Communications. 260(1). 9-12 (1999)
• [文献書誌] Kume A: "Green fluorescent protein as a selectable marker of retrovirally transduced hematopoietic progenitors"Stem Cells. 17(4). 226-232 (1999)
• [文献書誌] Xu R: "A selective amplifier gene for tamoxifen-inducible expansion of hematopoietic cells"Journal of Gene Medicine. 1(4). 236-244 (1999)
• [文献書誌] Kume A: "Hematopoietic stem cell gene therapy : a current overview"International Journal of Hematology. 69(4). 227-233 (1999)
• [文献書誌] Kume A: "Gene therapy for chronic granulomatous disease"Jounal of Laboratory and Clininical Medicine. (in press).
• [文献書誌] 小澤 敬也: "臨床遺伝子医学ガイダンス ー 分子医学へのアプローチ"南山堂. 312 (2000)