研究概要 |
臍帯血細胞は正常末梢血細胞と比較して電子顕微鏡形態学的に相違する点が種々みられた。好中球では、幼若な細胞、すなわち、前骨髄球〜骨髄球がかなり高頻度にみられた。成熟好中球ではnuclear pocketを有するものがしばしばみられ、apoptosisをおこしている細胞も存在した。好酸球は顆粒のクリスタロイドの異常がみられた。リンパ球は強い切れ込みやクローバ状の核など核の変形が目立った。核小体を有する幼若なリンパ球も多かった。赤血球系では赤芽球が多かった。少数ではあるが、幼若な所属不明の芽球がみられた。超低出生体重児の臍帯血では、芽球、幼若顆粒球、赤芽球などが成熟児の臍帯血に比較して目立ったが、形態異常については成熟児と変わりなかった。 臍帯血細胞より、CD34陽性細胞を取り出し、SF,GMCSF,IL4,IL6添加培養、電子顕微鏡にて観察した。骨髄幹細胞培養と比較すると、臍帯血培養細胞では、未熟な骨髄-単球系細胞が多く、成熟した好中球が少なかった。マクロファージも多く観察された。好塩基球は両者にみられた。臍帯血培養細胞では、ペルオキシダーゼ反応は弱く、また、陽性顆粒は小型で数も少なかった。 CD4+細胞およびNK細胞に発現するCXCR3などの活性化抗原を測定し、検討した。CD4^+T細胞のCXCR3の表出は末梢血と比べて有意に低かった。また、HLA-DRの発現はいずれも末梢血より臍帯血の方が少なかった。NK細胞ではCXCR3,HLA-DRの発現は臍帯血と末梢血の間に有意差はなかった。IL2で刺激したCD4^+細胞でのCXCR3の発現は培養後5日でも臍帯血は末梢血より少なかった。移植後1か月の臍帯血のCXCR3の発現を末梢血と比較してみると、臍帯血例で低値であった。
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