研究概要 |
ヒトINVERSIN遺伝子のcDNA配列全長および、エクソン・イントロン構造を決定した。ヒトINVERSIN遺伝子は,第9番染色体9q31に存在し、16個のエクソンから成り立ち1066アミノ酸の蛋白をコードすることを示し、遺伝子変異スクリーニングを行った。右胸心、心室中隔欠損、修正型大血管転位、肺動脈閉鎖を呈する女性患者1名で、第8エクソン内にS371Gアミノ酸置換を認めた。(1)このアミノ酸置換は正常人100人に認められなかった。(2)このアミノ酸置換は核内移行に関与し機能的に重要な領域であるアンキリン様繰返し配列内に位置していた、(3)変異を含む領域におけるマウスInversin蛋白配列とヒトINVERSIN蛋白配列との相同性は極めて高くセリン塩基もマウス配列において保存されている、という3つの理由によりS371Gアミノ酸置換が内臓錯位の発症に関与している可能性が高い。また内臓錯位を呈する男性患者2名で、第12エクソン内にA650Pアミノ酸置換を認めた。このアミノ酸置換は正常人100人に認められず、発症に関与している可能性が考えられた。 ヒトLEFTY遺伝子領域のゲノムを配列をコンピューター解析し、マウスLefty1遺伝子のゲノム配列と比較した。プロモーター領域の配列比較結果から、ヒトLEFTY2遺伝子が、マウスLefty1遺伝子のオルソログであり、ヒトLEFTY1遺伝子が、マウスLefty2遺伝子のオルソログであることを明らかにした。マウスLefty1遺伝子の5'端に存在する右側特異的発現抑制領域がヒトLEFTY2遺伝子の5'端にも存在することを発見した。内臓逆位の患者120名を対象としてヒトLEFTY2遺伝子の変異を解析した。数種類のアミノ酸置換が発見したが、これらの置換は正常対照においても認められたため、疾患に直接関与するとは結論づけられなかった。
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