研究概要 |
先天代謝異常症の中枢神経症状に対する治療法に関しては現在確立した方法が存在しないのが現状である。現在治療法としては先天代謝異常症の当該欠損酵素の遺伝子を中枢神経に導入する手法が主なものであるが、現在のところ明らかな効果は得られていない。今年度はこの問題を解決するため培養神経細胞にアデノウイルスベクターを用いてニューロンにneurotrophic factorを導入し神経細胞死を防げるかどうかを検討するとともに脊髄の損傷した運動ニューロンにneurotrophic factorを導入しそれが修復されるかを検討した。 成人の顔面神経由来の運動ニューロンは継代培養していく途中で通常アポトーシスを起こし死滅していく。この顔面神経由来の培養運動ニューロンにneurotrophic factorの一つであるGDNF遺伝子をアデノウイルスベクターを用いて遺伝子導入を行ったところニューロンはアポトーシスを起こさず3ケ月まで生存していた。また、成熟ラットの脊髄に機械的に損傷を起こしその損傷部位に継代培養グリア細胞株から由来するneurotrophic factorをアデノウイルスをベクターとして遺伝子導入したところ損傷された運動ニューロン部位は修復された。これらのデータは神経細胞特に運動ニューロンのダメージはneurotrophic factorの遺伝子導入により回復することを示しており先天代謝異常症の神経症状の治療法の一つとして考えられることを示唆している(J Neuroscience Res 60:511,2000,Neuroreport 11:1857,2000)。
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