平成11年度は、本研究の基礎的検討として小児期に早期に動脈硬化をきたすモデル疾患としてWilliams症候群(以下WSと略)患者について検討した。以下の値は平均±標準偏差で示す。 [結果]WS9名(年齢11.4±6.7歳)と、年齢のマッチした動脈硬化リスク因子を持たない対照14名(以下Cと略)(年齢16.1±8.9歳)について以下の結果を得た。 (1)総頚動脈内膜中膜厚(IMT):C群ではIMTは0.526±0.076mmであったのに対し、WS群では0.735±0.141mmとWS群でC群に比べてIMTの肥厚が認められ(P<0.0001)、WSでは動脈硬化が小児期においても出現していることが認められた。 (2)上腕動脈の血流増加ならびにニトログリセリン投与による血管拡張反応性:血流の一過性途絶後に認めれられる血流増加反応により上腕動脈はC群ではコントロール値に比べて13.1±5.3%増加にしたのに対して、WS群では7.4±5.4%と拡張性の低下が認められた(P=0.02)。これに対してニトログリセリン投与によってC群は22.7±7.5%拡張したのに対して、WS群では20.0±9.3%と有意差なく拡張した。すなわちWS群では内皮依存性の血管拡張反応性は小児期においても低下するのに対して、内皮非依存性の拡張性は比較的温存されることが明らかになった。 以上により本研究で用いる方法は動脈硬化をきたすモデル疾患において正しく病態を表現しうることが示唆された。
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