研究概要 |
てんかん発作に伴って海馬歯状回におけるcorticotropin-releasing factor(CRF)とprostaglandin(PG)の産生が著しく増加する。てんかん発作の発現とてんかん焦点形成におけるPGおよびCRFの役割を明らかにするため、以下の4つの実験をおこなった。 1.幼若ラットを被験体として、熱性けいれんの誘発に対するCRFの関与を検討した。CRF type I受容体拮抗薬であるCRA1000(20mg/kg,i.p.)は熱性けいれんの誘発閾値温度を上昇させたが、その効果は統計的に有意なものではなかった。 2.てんかん発作に伴うシナプス伝達増強(KIP)はてんかん焦点形成において促進的な役割を果たしていると考えられる。成熟ラットを被験体に、慢性電場電位記録法を用いて、KIPに対するCRA1000の効果を検討した。CRA1000(10mg/kg,i.p.)は、発作後EPSP抑制およびKIPに対して有意な効果を及ぼさなかった。 3.KIPと同様に、海馬長期シナプス伝達増強(LTP)はkindlingてんかん焦点形成を促進する。しかし、CRA1000(10mg/kg,i.p.)は、LTPに対しても有意な作用を及ぼさなかった。以上の実験結果から、細胞興奮性を上昇させると推測されているCRF type I受容体の賦活は、てんかん発作の発現およびてんかん焦点形成には関与していないものと結論された。 4.PG合成酵素であるcyclooxy genase-2(COX-2)のgene knockoutおよびCOX-2の選択的阻害薬(nimesulide)は、発作後抑制の強さを有意に強めた。この結果は、PGが発作後抑制を弱めて繰り返し発作を引き起こす傾向にあることを示唆している。
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