研究概要 |
ラットによるアドリアマイシン心筋症モデルの作製に成功し,さらに以下の実験を行った.Anthracycline系薬剤の新しい誘導体であるPirarubicinはAdriamycinに比べ,制癌作用作用は同等だが,心毒性は少ないとされているが,慢性心毒性に関しては正確な情報が少ない.そこでPirarubicinの慢性心毒性の程度を知る目的でAdriamycinにかえてPirarubicinを同様のプロトコールにて注射した.さらにanti-Fas ligand antibodyの抑制作用とも比較した.方法としてはまず組織学的変化を比較し,さらに心筋のapoptotic cellの出現頻度,Fas antigenの発現,心機能の推移についても比較検討した.Pirarubicin投与群ではAdriamycin群に比し有意にapoptotic cellの数が少なく,Fas antigenの過剰発現もみられなかった.また,心機能の低下もみられず,以上よりpirarubicinはAdriamycinより明らかに慢性心毒性は少なく,apoptotic indexより判断すると約1/4と考えられる.また,anti-Fas ligand antibodyによりFas/Fas interactionはblockでき,Adriamycin単独群にくらべapoptotic indexは少なかったがPirarubicin群に比べると大きく,その効果には限界があると思われた.
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