1.本硫究は、難治性てんかん脳症である点頭てんかん/レノックス症候群の病態生理を解明することを目的とする。平成11年度は、両てんかん症候群の既往を有する滑脳症例と新生児仮死後遺症例の側頭葉を解析した。興奮性アミノ酸毒性に関与するグルタミン酸トランスポーターとGABA系神経の指標であるカルシウム結合蛋白の表出は、両てんかん症候群の既往とは無関係に障害されていた。以前、同一例での検討で共通の脳幹部病変を指摘したが、側頭葉病変と両てんかん症候群既往との関係は明らかではなかった。 2.平成12年度は、進行性ミオクローヌスてんかん(PME)を呈する遺伝性歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)14例において脳幹部の機能的解析を試み、中脳中心灰白質と橋上中心核の神経伝達物質の表出がPME既往とは無関係に障害されていることを見出した。今後、DRPLAでは大脳皮質病変を検討する必要性が示唆された。一方、重障児・者剖検例70例の扁桃体病変を検討し、扁桃体病変が病因に左右され、けいれん発作の重症度や海馬病変の程度との間には有意の相関関係を認めないことを明らかにした。 3.平成13度は、レノックス症候群の既往は有さず大脳皮質に形成異常を示す点頭てんかん剖検例8例で脳幹部神経の機能的解析を試みた。半数例で中脳中心灰白質と上中心核でのtyrosine hydroxylase陽性神経細胞の減少が認められた。また、中脳中心灰白質、橋被蓋網様核、延髄不確縫線核でtryptophan hydroxylaseの表出が低下していたが神経ペプチド表出は保たれていた。これらの脳幹部病変は両てんかん症候群の既往を有する症例の病変より軽度であり、レノックス症候群への増悪に関与している可能性が考えられた。
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