研究概要 |
1)TNF-α及びIL-1βによる表皮角化細胞のCOL7A1発現調節機構の解析:これまで不明であったTNF-α及びIL-1βによる表皮角化細胞のCOL7A1発現調節をノーザンブロット法で検索した。その結果,両サイトカインともCOL7A1の発現を抑制しており,皮膚線維芽細胞の場合とは全く異なる機構の存在が示唆された。 2)IL-1βによる皮膚線維芽細胞のCOL7A1転写調節機構の解析:未だ詳細が不明な,IL-1βによる皮膚線維芽細胞のCOL7A1転写調節機構を解析した結果,プロモーター領域に存在するNF-κB結合領域がエンハンサー,AP-1結合領域がサプレッサーであることが更に明らかになった。 3)COL7A1の組織特異的発現調節機構の解析:申請者らが新たに調製したCOL7A1プロモーター領域(-1804〜+92)のルシフェラーゼベクターを表皮角化細胞及び皮膚線維芽細胞にトランスフェクトして,組織特異的な転写調節領域の同定を試みた。その結果,両者とも既報のSP-1結合部位以外検出されず,明らかな組織特異的転写調節機構の存在は見出されなかった。 4)栄養障害型表皮水疱症患者のCOL7A1プロモーター領域における変異の解析:PCR法による(各エクソン及びイントロン)増幅,heteroduplex analysisによる変異存在領域の決定及びこの領域のauto-sequencerによる変異の同定によって解析を行っても,全く変異の検出されない症例が存在した。そこで解析を行っていないCOL7A1プロモーター領域の変異を解析した結果,何れの症例においてもプロモーター領域には変異が検出されず,heteroduplex analysisの検出限界及びCOL7A1とは別の原因遺伝子の存在が考えられた。またこれらの症例の全塩基配列をauto-sequencerで解析した結果,新規の遺伝子変異7687-6 C→Tがみつかった。 5)表皮角化細胞へのCOL7A1導入:栄養障害型表皮水疱症の遺伝子治療の開発のため,遺伝子を効率よく導入する条件を検討し,naked DNA法が最も良い方法であることを見出した。次いで,この方法でヒトCOL7A1 cDNAをラット皮膚に導入したところ,導入24時間後には表皮角化細胞にVII型コラーゲンの発現を認め,1週間後には発現されたVII型コラーゲンが基底膜領域に移動し,VII型コラーゲンを主要構成成分とする基底膜領域のアンカーリングフィブリルの形成が示唆された。
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