ラミニンー5は、皮膚基底膜におもに存在し、表皮-真皮結合を支持するとともに種々の細胞生物学的機能を有している。機能として、表皮細胞の接着、移動、分化、増殖などが知られている。この分子は、部分分解されてのち、細胞移動への活性を有するようになるという報告がなされている。私は、ラミニンー5の、細胞接着活性に注目し、ラミニンー5受容体の同定を目的に研究をすすめた。 1。レコンビナント蛋白を用いての細胞接着活性の証明。2。合成ペプチドを用いての活性部位の同定。3。アフィニテイクロマトグラフィーによる活性部位の同定。4。遺伝子導入によるラミニン活性形質の同定。以上の方法により、ラミニンー5には、細胞表面のヘパラン硫酸プロテオグリカンのシンデカンが結合することを発見した。このシンデカンは、表皮細胞、線維芽細胞ともに発現しており、従来のインテグリン受容体とともに、共同して、ラミニンー5への細胞接着を司るといえる。ラミニンー5は、表皮細胞の移動に関与するとも報告も多くあり、この発見は、細胞移動に従来、言われていなかったシンデカンが関与することを始めて、かつ詳細に研究、解明したものといえる。この事実をさらに深めて、細胞移動の際の両受容体の関与を解明することは、創傷治癒への臨床応用を可能にするものと考えられる。
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