前年度までの研究により、Vγ3T細胞は胎生期には皮膚以外に腸管にも遊走するが、生後は腸管からは消失すること、Vγ3T細胞が胎生期の腸管で生存・増殖できない理由は、胎生期の皮膚と腸管におけるサイトカインの発現の差によるものではなく、腸管上皮細胞がVγ3TCRリガンドを発現していないためであることが明らかになった。胎生期の皮膚に遊走したVγ3T細胞が表皮ケラチノサイト上に発現しているVγ3TCRリガンドを認識することによりBcl-2等のapoptosis抑制分子の発現が誘導され、Vγ3T細胞の生存が維持されている可能性を検討するために、bcl-2遺伝子導入マウスの腸管におけるVγ3T細胞の存在を検討した。Vγ3TCR特異的なプライマーを用いたRT-PCR・抗Vγ3TCR抗体を用いた免疫組織化学染色および腸管上皮内リンパ球のフロサイトメトリーのいずれにおいても正常マウスと同様に成熟bcl-2遺伝子導入マウスの腸管からVγ3T細胞は検出されなかったことから、胎生期の皮膚においてVγ3TCRからのシグナルはBcl-2等のapoptosis抑制分子の発現誘導を介さずにVγ3T細胞の生存・増殖を支持していることが明らかになった。
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