5型ラミニンは表皮基底膜が真皮に接着するために重要な働きをし、ヘミデスモソームを構成している蛋白である。瘢痕性類天疱瘡患者の大部分はこの5型ラミニンに対する自己抗体を有していることが確かめられており、われわれが集めた患者血清も免疫沈降法でそのことを確認した。本蛋白は3種のサブユニット(α、β、γ)からなる3量体であり、自己抗体がどのサブユニットを認識しているのかを知ることが、本蛋白を介した細胞接着の機構の詳細を知るための手がかりになると考え、本研究をはじめた。我々の症例では免疫ブロット法の結果などからα蛋自に対する自己抗体の頻度が高いことが確認したので、その詳細なエピトープ解析を進めた。 RT-PCR法で得られたα鎖cDNA(約1kbの断片)を真核細胞で糖鎖を有するペプチドとして発現させたり、in vitro transcription/translation法で発現させて患者血清を用いた免疫沈降法を行なった結果では、α鎖N末端を構成するペプチドに反応する患者血清が多くみられ、角化細胞の接着機能に関与するとされるC末端とは反応するものが少なかった。以上の結果より自己抗体が角化細胞の接着を直接阻害し水疱形成をもたらすという天疱瘡で見られるような病態は本症では否定的であった。. これまでの研究を応用して本症の血清診断法を確立するため、すべての鎖の蛋白全長を含む発現ベクターを作成し、これらと患者血清を用いた高感度の診断法の開発を試みている。他の研究施設から5型ラミニンのαβγすべての鎖に対する自己抗体が瘢痕性類天疱瘡をおこしうる事が報告されており、本症の診断を簡便に行なうためには必要なものと考えている。
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