1980年Moroiらにより抗セントロメア抗体(Anti-centromere antibodies;ACA)が報告されて以来、同抗体の臨床的意義の研究並びに細胞生物学的なセントロメア解析は飛躍的に進んだと言える。膠原病患者生体内では自己抗体を産生するB細胞と自己抗原を認識するT細胞とが出現し、自己抗原が通常の免疫源と同様の動態で、さまざまなエピトープを認識する自己抗体の一群を造り上げていくであろうantigen-driven説が自己抗体産生仮説として有力である。ACAの産生機構の解明を目的として、主要対応抗原のCENP-A、-B、-Cに関して、ヒトACAの反応性を継時的に調べた所、CENP-A、-Cに対する反応性は多少の変動があるのに対して、CENP-Bに対する反応性は安定しており、殆ど変化が見られなかった。CENP-A、-Cに対する反応性は患者間で多様性が認められるものの、IgG、IgM、IgAクラスそれぞれに反応を認めたが、CENP-Bに対する反応はIgGクラスに限定されるものであった。以上の結果より、CENP-A、-Cに対する自己免疫応答とCENP-Bに対する自己免疫応答に明らかな差異が存在することが判明した。ヒトのACAに対するCENP-Aのメジャーエピトープ部分であるN末端はマウスのアミノ酸配列と比較的異なることより、合成ペプチドの免疫はマウスは適さないと考えられ、ウサギを免疫動物に使用した。現在までの結果は、免疫に使用したペプチドに対する抗体および抗CENP-A抗体は効率よく産生されたが、同ウサギにおける抗CENP-B、-C抗体までには至っていない。今後、ヒトACAの他のメジャーエピトープであるCENP-B、-Cの各C末端部分蛋白の2量体等を免疫源の候補として考慮中である。
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