デスモゾームにおける細胞間の接着様式は、デスモゾーム型カドヘリンが古典的カドヘリンと蛋白構造上の相同性を有することより、デスモグレイン・デスモコリン分子自身どうしのホモフィリックな結合によって成り立っていると考えられてきた。しかしながら、実際のヒトの表皮に存在するデスモゾームと接着帯の微細構造を電子顕微鏡で詳細に観察すると、デスモゾームにおける細胞間隙は接着帯におけるよりも大きく、また細胞間に接着帯には見られない構造物(デスモグレア)が観察される。そこで我々はデスモゾームにおける細胞接着には、デスモグレイン・デスモコリン等の既知の蛋白以外にこれらデスモゾーム型カドヘリンどうしを架橋するような働きをもつ未知の細胞外蛋白が必要なのではないかとかんがえ、デスモゾームの細胞外領域あるいは細胞内の裏打ち領域と結合し、デスモゾームにおける細胞接着を強める働きをする蛋白質の単離、同定を目的とする。このための方法として酵母の細胞核内で転写活性化因子GAL4を用いて2種の蛋白質間の相互作用を検出する手法であるツーハイブリッド法を用いた遺伝子のクローニング法を行った。 1)ターゲット遺伝子の構築:デスモグレイン3とデスモコリン3の細胞外領域であるEC1-EC3の部分を、それぞれGAL4遺伝子のDNA結合ドメインに連結させた2種類のベクターを用意した。また、デスモコリンの細胞内領域の2種類の転写産物のうち短い細胞内領域を持つバリアントのドメインをDNA結合ドメインに連結させたターゲットを構築した。この3種類のターゲットを主としてヒト表皮組織より構築したライブラリーをスクリーニングしたところ多数の互いに結合する分子が単利されてきた。現在までに活性型の蛋白質リン酸化酵素C(PKC)のアンカー蛋白であるRACK1蛋白がこの細胞内領域に結合することを明らかにした。この結果は表皮細胞間の接着がリン酸化酵素により可逆的に支配される事を考えると大変意味深いものと思われる。
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