研究概要 |
1.ヒト表皮ケラチノサイトにmelanocortin 1 受容体(melanocortin 1 receptor,MC1-R)が発現していること、また分化に伴い、この発現および受容体のリガンドとの結合能が高まることを明らかにした(J Invest Dermatol 112:853-860,1999)。MSHの受容体subspeciesの内、MC1-Rはメラノサイトのみに発現し、メラノサイトの分化形質、メラニンの産生をこのMC1-Rを介して誘導するとされていた従来の報告に対し、他の皮膚細胞種であるケラチノサイトの分化形質にも同受容体が関わっていることを明確にした。さらに、この受容体の発現は中波長紫外線(ultraviolet B,UVB)により亢進することも明らかにした(Ann NY Acad Sci 885:100-117,1999)。 2.MC1-Rの高発現が黒色種細胞の転移能と相関することを、マクロファージとのハイブリドーマ細胞を用いて明らかにした(Pigment Cell Res 12:355-366,1999)。さらに、メラノサイトの悪性化への過程において、MC1-RのリガンドであるMSHペプチドおよびその遺伝子であるproopiomelanocortin(POMC)遺伝子の発現の亢進がみられ、さらにこの発現亢進はcorticotropin releasing hormone(CRH)およびその受容体の高発現によるautocrine regulationによるものであることを明らかにした(J Invest Dermatol Symp Proc4:105-110,1999)。 3.黒色種細胞へのUVB照射により、メラニン生成に関わる糖蛋白tyrosinase related protein 2(TRP2)の発現減弱が、細胞死を引き起こすことを明らかにした(Melanoma Cell Res 9:433-445,1999)。さらに、メラニン生成のkey enzymeであるtyrosinaseがメラノソームから細胞質にでて、proteasomeにより破壊をうける系が脂肪酸リノール酸により調整を受けていることを示した(J Lipid Res 40:1312-1316,1999)。
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