皮膚アレルギー性疾患における神経の役割の役割を明らかにするため、サブスタンスP刺激により皮膚マスト細胞から放出されるヒスタミン、LTB4およびTNFαの動態とマスト細胞の分化・増殖機序について研究した。手術材料より得られたヒト皮膚組織をサブスタンスPで刺激すると、すべてのドナー由来の皮膚組織からヒスタミンが遊離されたが、LTB4およびTNFα遊離については各々36.4%および80%の皮膚ドナー組織からのみ明らかな遊離が誘導された。また皮膚組織をステロイドまたはMAPキナーゼ(ERK)阻害剤により前処理すると、ヒスタミン遊離は影響を受けることなくTNFα遊離が抑制された。さらに運動、発汗、緊張などにより誘導される蕁麻疹において、皮疹出現とともに脳波異常が現われる症例を見出し、脳幹レベルでの中枢神経活動が皮膚アレルギー様症状と連動し得ることを明らかにした。 次にヒト皮膚マスト細胞を刺激した際に見られる活性物質遊離パターンの多様性を解析するため、マウス骨髄由来培養マスト細胞をSCF、あるいはNIH3T3線維芽細胞存在下に培養し、サブスタンスPに対する応答獲得機序、および細胞増殖機序について研究した。マウス骨髄由来マスト細胞は、SCF存在下に培養するとサブスタンスP刺激に反応してヒスタミン遊離を起こすことなくLTB4を遊離し、SCF受容体(c-kit)に変異を持つマスト細胞を線維芽細胞と共に培養すると、逆にLTB4遊離を起こすことなくヒスタミン遊離を起こすようになった。このLTB4遊離は抗アレルギー薬およびMAPキナーゼ(ERK)により抑制されたが、細胞内Ca^<2+>濃度の上昇とは明らかな相関は認められなかった。またマスト細胞/線維芽細胞共生培養系において、IL-6ファミリーは線維芽細胞上の非SCF因子を介してマスト細胞の増殖を促すことが明らかになった。
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