若禿男性4人の若禿げ部、非若禿げ部の毛包より毛乳頭を採取し毛乳頭細胞を培養した。ついで各々の細胞よりmRNAを採取後、遺伝子の3'末端cDNAライブラリーを構築し、2000個のクローンでTag塩基配列を解析し、間違いのない1600個の遺伝子に関して発現プロファイルを遺伝子発現データベース(BodyMap:阪大)と比較検討した。そして、(1)毛乳頭で特異的に発現されている遺伝子と、(2)若禿げ毛乳頭と非若禿げ毛乳頭において、発現量に大差がある未知・既知遺伝子を探した。その結果30個近くの新規遺伝子がみつかったが、発現量の多いものから1)、2)群よりそれぞれ5個、8個の遺伝子を選び全DNA配列を決定した。その情報に従い一部のもので特異的ペプチド抗体を作成し、遺伝子産物の毛包における時期別、部位別の発現を調べたところ、残念ながらいずれも毛乳頭特異的なものではなかった。本研究の一部は他施設の共同研究であること、また特許出願との関係で論文発表は今年度末となるが、今年5月には1600個の遺伝子発現プロファイルを情報公開する予定である。 一方、ラット毛乳頭に特異的単クローン抗体を作成し、毛乳頭〜毛包で発現される抗原を認識する抗体のうち、ヒト毛包特異的に反応する2抗体の抗原を決定し発表し論文を提出した。また、ヒト毛乳頭細胞が毛包上皮細胞遊走因子を産生し培地中に放出することを見出した。 発毛効果を有するミノキシジールは毛乳頭細胞のスルフォニルウレア受容体と結合後、ATPを産生・放出し、その後ATPはアデノシンに変換され、アデノシン受容体と結合後、細胞内カルシウム上昇を通じてシグナル伝達を行い、最終的に血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を放出することで発毛を促すとの仮説を立て、証明した。
|