研究概要 |
【目的】ヒト表皮角化細胞の増殖はEGFリセプターとそのリガンドによって担われている部分が多く、autocrineなリガンドとしてHB-EGF、TGF-α、Amphiregulin、が同定されている。これらは膜アンカー型増殖因子であり、創傷治癒時において、これらの因子の膜アンカー型から遊離型への変換の意義を明らかにするためにHB-EGF変換酵素阻害剤を用いて解析を行った。【方法】培養ヒト表皮角化細胞を用いシリコンラバーで細胞を剥離し、創傷モデルを作成した。変換酵素阻害剤添加群と無添加群を作成し、細胞の遊走・増殖を観察した。また剥離施行から0,24,48,72,96,120,144時間後の培養上清を回収しEP170.7細胞株とその親株を用いたbio assayを行い、EGFリセプターのリガンド産生量の経時的な変化を2群間で比較検討した。併せて、同様のモデルを作成し、阻害剤添加群と無添加群で剥離施行から0,1,2,3,6,9,12,24時間後における各増殖因子のmRNAの発現レベルをnorthern blottingにより解析した。【結果】創傷部位の光顕的観察においては、阻害剤添加群は無添加群に比して、その増殖は70%以上、走化では80%以上が著明に抑制されていた。培養上清中に存在する種々の増殖因子、剥離から48,120時間後をピークとした二峰性を呈し、全経過を通してHB-EGFが圧倒的に優位であり、24時間の時点では95%以上、それ以降も50%以上を占めていた。各増殖因子のmRNA発現レベル・STAT蛋白の局在については現在解析中である。【考察・結論】創傷治癒での増殖・走化にはプロセッシングが大きく関与していることが判明した。また治癒機転の極く早期の段階では、EGFリセプターのリガンドとなるEGFファミリーの中でも、特にHB-EGFが増殖因子間相互作用・制御に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
|