腋臭症患者の腋窩皮膚より単離したアポクリン腺のホモジネートを、^3H-アンドロステンジオン200nMを基質として1mM NADPH存在下に20分インキュベートした。抽出した代謝産物のうちテストステロンを薄層クロマトグラフィー、高速液クロによる同定し、その放射活性と組織のタンパク濃度から17β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(17β-HSD)の活性を計算した。現在までに得られた結果は次の通りである。1.予備実験として補酵素に関しては、pH5.0ではNADPH>NADPH generating system>NADHの順に親和性が高かった。2.組織タンパク濃度は10-90μg/100μ1の間でタンパク量と産生されたテストステロンとの間に比例関係がみられた。3.pH5.0では30分まで反応時間に比例してテストステロンが増加した。4.この反応液の組成では特に中性領域では5α-リダクターゼ(タイプ1)によって基質の30%以上がアンドロスタンジオンに代謝されてしまうため、17β-HSD活性を正確に測定できない。そこで、5α-リダクターゼ阻害剤MK386を基質200uMに対して100nM加えたところ、17β-HSD活性は影響を受けず、且つアンドロスタンジオン産生は1/6以下に抑制されたので、中性領域においても17β-HSD活性を正確に測定できることがわかった。5.次に反応の至適pHを検討した。4の結果に基づき、pH5.5〜11ではMK-386を100nM加えてインキュベートした。その結果、反応のピークはpH5.5と9の二ヵ所にみられた。前者はおそらく17β-HSDのタイプ3に相当すると推測される。RT-PCRでも用いた4検体すべてにタイプ3と同じ位置にバンドが得られた。以上の結果から、これまで睾丸と女性腹壁の脂肪織、大網にのみ存在が報告されているタイプ3の17HSDが、アポクリン腺にも存在することが強く示唆される。なお、pH9.0にあるかっせいのピークについてはこれまで報告がなく、いかなるアイソザイムに相当するものか不明である。
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