研究概要 |
ある自己免疫性水疱症患者の血清が認識した450-kDaヒト表皮自己抗原のcDNAの全塩基配列を決定し、その蛋白質の一次構造をあきらかにした。その結果5,065個のアミノ酸からなり、推定分子量は552kDaであった。以前報告したようにこの蛋白質は、プレクチン、デスモプラキンとホモロジーが認められ、これらの蛋白質と同じプラキン・ファミリーに属するものであったが、以下の点で他のプラキン分子と大きく異なっており、エピプラキンと命名を変更した。即ち(1)デスモプラキンのカルボキシ末端に見られるBドメイン類似のドメインが13個直列にほぼ均等の間隔で繋がっていた。(2)このうちカルボキシ末端側5個のドメインとその連結部分はホモロジーが特に高く殆ど同-配列が認められた。(3)通常のプラキン分子に見られる棒状ドメインやアミノ末端ドメインは見られず、二量体構成モチーフも見られなかった。このことはエピプラキンがこれまでに知られていたプラキン・ファミリー分子とはカテゴリーの異なる分子に属することを意味し、今後の機能の解明が注目される。ライブラリーのスクリーニングに用いた患者血清が認識するエピトープをペプチド・ブロット法、ELISA法、ペプチド吸収法で決定したところ、エピプラキンに特異的な部位に存在することが明らかになった。ノーザン・ドットブロットでは、エピプラキンは、皮膚以外に胎盤、肝臓、胃、小腸、大腸、虫垂、唾液腺、脳などに発現していた。エピプラキン特異配列に対する単クローン、もしくは多クローン抗体を用いた免疫組織染色では、皮膚ではほぼ全層が陽性であり、汗腺の一部と毛包も陽性であった。食道粘膜上皮も全層が陽性で、唾液腺、胃、大腸粘膜も陽性に染色された。今後はアンチセンス法、ドメインの強制発現、共焦点レーザー顕微鏡観察、免疫沈降法などを用いて、その機能を探りたい。
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