研究概要 |
EBウイルス関連T/NKリンパ腫はアジアとメキシコに多発する.その地域特異的発症には,遺伝的背景,環境因子,ウイルスサブタイプや乳幼児期に感染するために生じる免疫学的寛容などが関係していると思われる.われわれは,皮膚リンパ腫症例からEBウイルスの分離をおこない,細胞形質転換に最も重要と考えられるEBNA-2とLMP-1の遺伝子多型解析から,本邦のリンパ腫症例にみられるEBウイルスサブタイプを決定し,正常人および欧米のサブタイプと比較した.さらに,潜伏感染におけるウイルス抗原の発現様式とEBNAプロモ-ターの使用について解析した.その結果,9例中8例ではEBV subtype 1のみ、1例ではsubtype 1と2の両方の感染が認められた.1例を除き、LMP-1遺伝子exon 1のXho-1 siteが欠損し、exon3に30bpの塩基配列の欠落が認められた.潜伏感染様式はlatency II型(EBNA1+,LMP-1+)を示し、EBNA1のQpプロモーターを利用していた.急激な経過をとり死亡した症例では,vIL10(BCRF1)とbcl-2の発現が認められた.すなわち、日本の皮膚T/NKリンパ腫に関与するEBウイルスは、中国上咽頭がんから分離されるタイプと類似のウイルス遺伝子の組み合わせを持つ細胞形質転換能が高いバリアントであり,潜伏感染にあっては,ウイルス抗原の発現を制御しつつ,免疫抑制因子を産生することにより宿主の免疫機構を回避して増殖を続けているものと思われる.
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