研究概要 |
1.EBウイルスサブタイプの解析:本邦症例のEBウイルスサブタイプが,EBNA2遺伝子型:type I(A),LMP-1遺伝子型:Xhol site(-),30bp del(+)であることを決定した.しかし,このEBウイルスサブタイプは,患者だけではなく正常人からも分離されたので,このサブタイプの蔓延だけでは地域特異的発生は説明できない. 2.潜伏関連ウイルス遺伝子の発現様式:皮膚NK/T細胞リンパ腫におけるEBウイルスは,EBNA遺伝子のFp/Qpプロモーターを使用し,Latency II型のウイルス抗原の発現を示すことを明らかにした.すなわち,EBウイルス感染腫瘍細胞はEBNA-1とLMPを発現しているが,そのほかのウイルス抗原の発現は制限されていた. 3.ウイルス由来サイトカインとアポトーシス抑制因子:EBウイルスは,virokineであるviral IL-10と,bcl-2のホモログを,コードしている.我々は進展の早い高齢者のNK/T細胞リンパ腫患者にvIL-10とbcl-2の発現を認め,これらの分子ががんの準展や浸潤に関与していることを報告した. 4.EBウイルスDNAコピー数解析と臨床的意義:EBウイルスのEBNA1遺伝子領域を組み込んだプラスミドを作製し,EBウイルスDNAを定量的に測定できるPCR法を実施した.種痘様水疱症やNK細胞リンパ腫や蚊刺過敏症患者の末梢血では程度の差はあってもEBウイルスDNAを持った細胞が存在することを明らかにした.そのコピー数をモニターすることによって病状の進展を予測できるかどうかを検討している. 5.EBウイルス感染NK細胞の解析:患者の末梢血からEBウイルス感染NK細胞株(NOY-1)を樹立した.表面形質はCD3-,4-,8-,56+で,IFN-γ産生株で,7.5 copies/cellのEBウイルスを保有しており,Southern blot法で単一クローンであった.また,蚊刺部の皮膚病変のNK細胞クローンと,この細胞株(NOY-1)とは異なったクローンであり,末梢血NK細胞には優位なクローンは認められなかった.すなわち,蚊刺過敏症ではEBウイルス感染NK細胞のオリゴクローン性増殖が本態であると考えられた.
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