研究概要 |
魚鱗癬は「魚のうろこ」を思わせる、全身性の溺慢性鱗屑や過角化を主徴とする疾患で、多くは生下時より発症する。近年の分子医学の進歩により重症の遺伝性魚鱗癬の原因遺伝子がいくつか同定されている。 本年度の研究では、昨年度の研究に引き続き(1)当大学付属病院の皮膚科外来に来院した、水疱型(BCIE)、及び非水疱型(NBCIE)の先天性魚鱗癬様紅皮症の症例において、患者genomic DNAからkeratin遺伝子、transglutaminase(TGase)遺伝子を中心に変異検索を進めていきたい。特にBCIE症例では、keratin 2遺伝子の「遺伝子変異型-表現型」相関について昨年度は論文報告を行うことができた(Exp Dermatol,2000)。また、NBCIEの遺伝子変異検索については、免疫組織学、電顕などでTGase、及びsulfhydryl oxidase(SOx)など周辺帯と呼ばれる細胞膜裏打ち構造に重要な酵素の遺伝子発現、局在異常が認められる症例を5症例ほど発見することができた(一部報告済Int J Dermatol,2000)。特にTGase遺伝子では、現在、SSCPなどの方法でhot spotの変異について同定を急いでいる。SOxでは未だ遺伝子配列が決定されていない為に、表皮cDNA、genomic libraryからのcloningが必要となった。我々は昨年度、表皮SOxのcDNAを得ることに成功しており(J Invest Dermatol投稿中)、現在genomic libraryからのclonning、そして患者DNAからの表皮SOx遺伝子変異の同定についてもlinkage assayなどを用いて検討中である。 次に、(2)本邦における患者数、治療の現況と予後の全国調査については、すでに作成したアンケート用紙に対して、更なる改善が必要と事前評価された。このため昨年度報告した如く、日本皮膚科学会認定の第15回角化症研究会でそのアンケート内容を発表(第15回角化症研究会記録集,2000)し、角化症を専門とする先生方より記載法、分類法などについて多くの討論がなされた。本年度の「第16回角化症研究会」で研究会出席者の同意を得ることにより、現在控えている各医療機関へのアンケート送付を開始したい。
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