重症先天性魚鱗癬、特に先天性魚鱗癬様紅皮症の病態、診断、治療に関する研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11670851
• 研究機関: 順天堂大学
• 研究代表者: 須賀 康 順天堂大学, 医学部, 講師 (90245738)
• 研究分担者: 矢口 均 順天堂大学, 医学部, 講師 (60191095) ; 池田 志学 順天堂大学, 医学部, 講師 (40193198) ; 稲葉 裕 順天堂大学, 医学部, 教授 (30010094)
• キーワード: transglutaminase遺伝子 / sulfhydryl oxidase遺伝子 / 先天性魚鱗癬様紅皮症 / 先天性魚鱗癬 / 遺伝子解析

研究概要

先天性魚鱗癬(CIE)の病型には常染色体優性の「水疱型」と劣性の「非水疱型」がある。非水疱型のCIEでは表皮細胞の最終分化に必要な周辺帯の形成不全が認められ、その一部は表皮transglutaminase(TGasel)遺伝子の変異により発症することが知られているが、大部分の非水疱型CIEでは未だ原因遺伝子の同定がなされていない。本年度の研究では、昨年度に続き非水疱型CIEの変異遺伝子についての解析を継続した。
(1).我々は昨年度までの研究により、Thiol Oxidaseの一種であるSOx遺伝子の異常が疑われる非水疱型CIEの3家系を報告した。今回、免疫組織学的にSOxの発現が認められない非水疱型CIEの3家系に対して、遺伝子変異検索のため分子生物学的なアプローチを開始した。このうち1家系ではTGasel遺伝子に未報告の遺伝子異常が発見されたが(発表準備中)、他の2家系ではTGasel遺伝子異常が否定されたため、現在もSOx遺伝子の変異検索を継続中である。
(2).次にSOx遺伝子変異が非水疱型CIEの原因と成ることを証明するため、SOx recombinantタンパクを分化特異的なプロモーターを使用して、ラット培養表皮細胞株(REK)に過剰に発現させた。表皮を再構築して観察したところ、これらの細胞周囲にはジスルフィド結合染色で強陽性の角質周辺帯が形成されており、超音波粉砕や煮沸などの物理学的な刺激に対して耐性が増していた。すなわち、SOxは表皮バリアー機能を強化するために重要であることが推論された。また、胎生ラットにおいて表皮バリアー機能の完成を抗SOx抗体とジスルフィド反応で免疫組織学に検討した。その結果、SOxを介したジスルフィド結合の形成は胎児の表皮バリアー機能を完成させる上で必須であることが判明した(発表準備中)。現在、ラットSOx遺伝子からマウスSOx遺伝子を予想してtargeting vectorを作成し、非水疱型CIEのモデルマウスであるSOxノックアウトマウスを作成準備中である。

研究成果

• [文献書誌] Hashimoto Y, et al.: "Inquiry into the role of skin sulfhydryl oxidase in epidermal disulfide bond formation : implications of the localization and regulation of skin SOx as revealed by TPA, retinoic acid, and UVB radiation"J Invest Dermatol.. 117(3). 752-754 (2001)
• [文献書誌] Suga Y, et al.: "Topical tacrolimus for chronic actinic dermatitis"J. Am. Acad. Dermatol.. 46(2). 321-323 (2002)
• [文献書誌] Hisamichi, et al.: "Two Japanese cases of localized involutional lipoatrophy"Int. J. Dermatol.. (in press). (2002)
• [文献書誌] Matsuba, et al.: "Sulfhydryl oxidase (SOx) from mouse epidermis ; molecular cloning, nucleotide sequence, and expression of recombinant protein in the cultured cells"J.Dermatol.Sci. (in press). (2002)
• [文献書誌] 須賀 康, 他: "第16回角化症研究会記録集"協和企画 東京. 10 (2001)