まずBP180cDNAの4つの部分(細胞外部分全長をカバーする3部位およびNC16a部位)をコードするcDNAを、特異的プライマーと正常ケラチノサイトcDNAライブラリーを用いたPCR法により得た。それぞれのcDNAを大腸菌発現ベクターpGEXに組込み、大腸菌にトランスフェクトし、リコンビナントGST融合蛋白を誘導した。そのリコンビナント蛋白を用いた免疫ブロット法で水疱性類天疱瘡血清がN末端側(特にNC16a部位)に反応するのに対して瘢痕性類天疱瘡血清はC末端側に反応することをみいだした。この事実は抗体の反応部位の相違がこの2者の臨床像の違いに関与していることを示唆した。さらに、BP180のC末端から15番目のコラーゲン部位(C15)をコードするcDNAからリコンビナントGST蛋白を作製した。その蛋白を用いた免疫ブロット法で、線状IgA水疱性皮膚症の血清がこのリコンビナント蛋白に特異的に反応することを見いだした。この事実は、線状IgA水疱性皮膚症が、BP180分子上の特異的なエピトープに反応することを示唆した。同様に、全長のBP230分子cDNAをカバーするほぼ同じ大きさ(約3kb)の異なった3つのcDNAを得、そのリコンビナント蛋白を作製した。免疫ブロット法で、多くの水疱性類天疱瘡が各部位のリコンビナント蛋白、とくC末端部位に特異的に強く反応することが判明した。天疱瘡群患者血清の一部もこれらのBP230のリコンビナント蛋白にわずかに反応したが、その反応は水疱性類天疱瘡に比べて非常に弱いものであった。この事実はBP230が水疱性類天疱瘡特異的抗原であることを示唆した。さらに、以前作製したBP180NC16a部位のリコンビナント蛋白を用いたELISAを作製し、現在、水疱性類天疱瘡を含めた各種患者血清の反応を検討中である。今後従来の蛍光抗体法に代わる検査法になる可能性がある。
|