研究概要 |
前年度は,近赤外光スペクトロスコピーによる,正常組織と腫瘍組織の酸素状態の比較を中心に検討を行ったが,今年度は細胞内外の酸素状態の比較検討を行った。細胞外酸素状態のパラメータとして酸化ヘモグロビン(HbO2:mg/ml tissue)を用い,細胞内酸素状態のパラメータとしてチトクロームaa3(Cyto:unit)を用いた。昨年度の検討で,正常組織の酸素状態は頬粘膜部の値が最適と判断されたため,正常ボランティアおよび他部位に腫瘍を有する患者計23名に対して,同部位のHbO2とCytoを測定した。 結果は,正常ボランティアにおけるHbO2が7.61±0.63,Cytoが0.62±0.16(共にmean±s.d.)であり,一方,頭頚部腫瘍患者11名における腫瘍部のHbO2が1.69±2.45,Cytoが0.12±0.19であった。いずれも正常組織に比較して有意に(p<0.05)低値を示した。この結果から,腫瘍組織のエネルギー代謝は正常組織に比べて好気性代謝より嫌気性代謝に依存する割合が大きいことが示唆された。 2年間のわたり非侵襲的な近赤外光スペクトロスコピーをもちいて正常組織および腫瘍組織に対する酸素状態の臨床的に評価をおこなった。腫瘍組織における酸素状態は放射線治療抵抗性腫瘍を克服する上で重要な意義を持つため,放射線治療における治療成績を評価する上で本法は有効な評価方法であると考える。
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