研究概要 |
本研究は、根治的放射線治療の最大の対象である頭頚部癌において、原発巣および頚部リンパ節転移巣の酸素状態を非侵襲的な近赤外光スペクトロスコピーによって評価し、酸素状態の臨床的意義を明らかにすることを目的としている。平成11年度は、近赤外光スペクトロスコピーを用いて、主に酸化ヘモグロビンの値を測定して正常組織と腫瘍組織の酸素状態の比較を中心に検討した。平成12年度は、チトクロムaa3の値を測定して細胞内外の酸素状態の比較検討を行った。 酸化ヘモグロビンの値は、頭頚部正常組織では粘膜で高く皮膚で低い傾向を示した。頬粘膜が正常組織酸素状態の測定点として最高値を示した。酸化ヘモグロビンに対する末梢血ヘモグロビンおよび動脈血酸素分圧の相関性はほとんど無かった。そのため、ここで得られた酸化ヘモグロビンの値は、血液中の酸素状態ではなく生体組織における酸素状態を表すものと考えられた。頭頚部腫瘍の転移巣では正常組織に比べて有意に低くかった。ただし原発巣では、正常組織に近い値と低い値に2分極化し、酸素状態が良好および不良(低酸素状態)の腫瘍に分けられた。 頭頚部腫瘍部におけるチトクロムaa3の値は、正常組織に比較して有意に(p<0.05)低くかった。チトクロムaa3に対する末梢血ヘモグロビンおよび動脈血酸素分圧の相関性は、正常組織および腫瘍組織共にほとんど無かった。腫瘍組織のエネルギー代謝は正常組織に比べて好気性代謝より嫌気性代謝に依存する割合が大きいことが示唆された。 2年間のわたり非侵襲的な近赤外光スペクトロスコピーをもちいて正常組織および腫瘍組織に対する酸素状態の臨床的に評価をおこなった。腫瘍組織における酸素状態は放射線治療抵抗性腫瘍を克服する上で重要な意義を持つため,放射線治療における治療成績を評価する上で本法は有効な評価方法であると考える。
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