研究概要 |
一側性のテント上脳腫瘍19例において,三次元カラー表示法により腫瘍と錐体路の関係を検討し,また,拡散テンソル測定により,錐体路の拡散異方性(FA),拡散トレース(trace),拡散固有値(e1,e2,e3)の検討を行った. 三次元カラー表示画像は,直交する3軸方向に運動検出傾斜磁場(MPG)を印加して得られた3つの拡散強調像をR,G,Bにカラーコード化し合成して作成した.また,6軸にMPGを印加した拡散テンソル解析により,FA,trace,e1,e2,e3の画像を作製した.各症例において,関心領域(ROI)を腫瘍側の錐体路に設定しFA,trace,e1,e2,e3の値を測定した. 三次元カラー表示画像により,全症例において錐体路と思われる線維を同定でき,腫瘍との関係が描出できた.ただし,錐体路にT2強調像での異常高信号が認められる場合には,これが浮腫によるものか腫瘍の浸潤によるものかを鑑別するのは困難であった. 次に,ROIを設定した錐体路を,圧排の有無とT2強調画像の所見により以下の3群に分けて検討した. a)正常群:錐体路は圧排もされず,異常信号も呈していない b)圧排群:腫瘍により圧排されているが,異常高信号は呈していない c)T2-high群:T2強調画像にて高信号を呈している 圧排群のFAは正常群,T2-high群と比べ有意に上昇していた.これは錐体路が腫瘍に圧排され,神経線維の走行が限定されてくるためと思われた.T2-high群は圧排群や正常群と比べtraceが有意に上昇していた.拡散固有値を見るとe1に比べ,e2およびe3の上昇率が有意に高かく,錐体路と平行な方向に比べ,直交する方向への拡散がより冗進しやすく,これがtraceの上昇をきたす要因と考えられた. 脳腫瘍例に三次元カラー表示法を応用することで錐体路などの重要な神経線維と腫瘍との位置関係を把握することができた.また,拡散テンソル解析を加えることにより,腫瘍の進展様式などについてのより詳細な情報が得られる可能性が示唆された.
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