研究概要 |
上皮増殖因子受容体(EGFR)の発現と放射線感受性とが逆相関をしており、その機序として受容体が高発現している腫瘍では照射により受容体のキナーゼドメインに自己リン酸化が起こり、下流のシグナルが活性化していることが一因であるとin vivoの腫瘍で明らかにし報告した.その後、最近、"生存シグナル"として注目を集めているのPas-Raf-MAPKとP13K-AKT/PKBのシグナル伝達経路の中心分子であるp42/p44ERKとAKT/PKBの活性が照射により増強しており、それぞれの阻害剤を用いたシグナル伝達経路の阻害により放射線感受性が増感されることを明らかにした(癌学会1999発表,投稿中).細胞周期の変化では阻害により照射でみられるG2 arrestの遷延とG1-S期の進行の遅延も認められた.これらの変化はp53野生型の細胞株で強いという結果を得ており、p53野生型の細胞株ではPARP cleavageの阻害による増加もみられることより、p53とそのシグナル伝達とのクロストークが示唆される.今後、臨床応用可能な分子ターゲットを明らかにすることを目的に、アンチセンスを用いたより選択的なシグナル伝達経路の阻害による放射線感受性修飾効果についても検討予定である.
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