ラットにて一側黒質に6-ヒドロキシドーパミンを定位的に微量注入してドーパミン神経を選択的に破壊することでパーキンソンモデルを作成した。2週間後、アポモルフィンの腹腔内投与による回転運動を計測した後、断頭屠殺し脳の新鮮凍結切片を作成した。抗チロシンハイドロキシラーゼ(TH)抗体による免疫抗体染色を行い、定量した。[^3H]SCH-23390を用いたドーパミンD1受容体、[^3H]YM-09151-2によるドーパミンD2受容体および[^3H]GBR-12935を用いたドーパミントランスポータ(DAT)の各オートラジオグラフィを専用イメージングプレートを使って行い、イメージングアナライザ(FUJI BAS-5000)で定量的に解析した。対照群では、生理食塩水を注入した。定量値は、それぞれ健側に対する破壊側の比で検討した。 モデルラットの破壊側にてDAT結合と抗TH抗体による免疫抗体染色性が低下した。D2受容体の軽度上昇が認められたが、D1受容体の変化は無かった。これらは従来の報告に一致する。アポモルフィン投与による回転数と抗TH抗体染色性の低下との間には負の強い相関関係が認められた。DAT結合は、抗TH抗体染色性との間に弱い相関があったが、回転運動の評価や抗TH抗体染色性より鋭敏であった。破壊側のドーパミンD2受容体増加は回転運動が起きるような強い破壊でみられ、ドーパミン減少に伴う代償反応と考えられたが、THの低下しない弱い程度の破壊では増加が無くドーパミンの低下が乏しいことが推定される。DATによる画像化は、抗TH抗体の変化やアポモルフィンによる回転運動が起こるよりも軽度のドーパミン神経系の傷害を鋭敏に捉えることができる有用な方法であることが示された。ドーパミン神経の機能障害時においてドーパミン減少前に異常を捉えられて早期診断に役立つと思われる。
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