研究概要 |
1.撮像パルスシーケンスの開発。 ゼラチンファントムを用いた基礎実験からspoiled gradient echo(SPGR)法が最も強いMT effectを有することが判明し、本研究は3-D SPGR法を用いることに決定した。既存のmagnetization transfer pulse付き3-D spoiled gradient echo(3-D SPGR)法は任意の周波数帯域にsaturation pulseを負荷することができないため、磁気共鳴画像診断装置のメーカーであるGE社に協力を依頼し、パルスシーケンスの改良を行った。ゼラチンファントムを用いた実験でこのパルスシーケンスが良好なMT effectを有していること、さらに任意の周波数帯域にMT pulseが負荷されていることを確認し、撮像パルスシーケンスの開発が平成11年8月までに完成した。MT pulseを負荷する周波数帯域は300Hz,1200Hzおよび2000Hzの3ヶ所にすることとした。 2.前立腺癌患者への応用 平成11年9月から平成12年2月までに対象とした前立腺癌患者は11例であり、年齢は61〜74才(平均70.2)、前立腺癌疑いにて泌尿器科外来で施行した針生検で前立腺癌が証明された6例、前立腺癌に対するホルモン治療中が6例である。全例で良好なMTR画像を得ることに成功した。照射周波数帯域の違いにより、MTR画像が変化した。300Hzでは前立腺全体が均一なMTRを有する傾向があった。1200Hzおよび2000Hzでは外腺は低いMTRを呈し、内腺は高いMTRを呈した。針生検後の出血のため、T2強調像で抽出されなかった外腺の腫瘍がMTR画像で抽出された。さらにホルモン治療後では線維化をきたしている部位が非常に高いMTRを有する傾向にあることが判明した。さらなる症例の蓄積および摘出病理組織標本との詳細な比較検討を今後行っていく予定である。
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