1.前立腺癌患者への応用 平成12年3月から平成13年2月までに36例の前立腺癌患者を対象として撮像を施行した。年齢は52〜86才(平均71.4)、針生検で前立腺癌が証明された21例、ホルモン治療中または治療後の経過観察例15例である。照射周波数帯域300Hzでは脂肪組織、脂肪髄化した骨髄は低いMTRを示したものの、前立腺をはじめとして筋組織、膀胱内の尿までがほぼ均一な高いMTRを示した。1200Hzと2000Hzとでは、前立腺のMTRは若干異なり、隣接する筋組織と比較して、1200Hzでは低値を示したが外腺・内腺のコントラストに変化はみられなかった。T2強調像で外腺より発生したと思われた腫瘍は、正常外腺と比較して高いMTRを示す傾向にあった。ホルモン治療群において、Prostatic Specific Antigen(PSA)が低値を示し治療効果が良好な症例においてMTRは均一な低値を示した。 2.前立腺全摘出例におけるMTR画像と摘出病理組織標本との比較 研究開始後、前立腺全摘出術を施行された症例は6例であり、MTR画像と摘出病理組織標本との比較を行った。6例中3例がホルモン治療後、3例はホルモン治療を施行せずに手術が施行された。ホルモン治療後3例ではMTR画像では筋組織と比較して均一な低値を示し、摘出標本では3例とも腫瘍組織は全体が変性しており、顕微鏡的な残存腫瘍を認めるのみであった。ホルモン治療を施行せずに手術を施行した3例のなかで、T2強調像で腫瘍の局在を指摘できたものの、MTR画像で腫瘍の存在を指摘できなかった1例があったが、他の2例では癌組織の分布をよく反映していた。MTR画像は前立腺癌の局在診断、ホルモン治療中の病巣の評価に有効と考えられたが、有効性の評価には今後さらなる症例の蓄積が必要と考えられた。
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